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志賀 信夫氏によるダンス評論文 『TH叢書No35』(アトリエサード)掲載
「女子高生のピナ・バウシュ」
素晴らしい舞台を見た。群馬県高崎市で瀬山紀子が指導するバレエ・ノアをファビアン・プリオヴィユが振り付けた。これは女 子高生たちが、ピナ・バウシュのような舞台を見事に演じるものだった(彩の国さいたま芸術劇場、四月一七日)。フランス人フ ァビアンはピナ・バウシュのヴッパタール舞踊団に所属していたダンサー・振付家。瀬山紀子の娘で、ヴッパタール舞踊団の瀬山 亜津咲と結婚したことがきっかけだ。合わせてファビアンのソロ『エディ』を上演した。『エディ』はテクニックとセンスを感じ させ、怪我を乗り越えてきた過程を描くという興味深いものだった。
群舞を中心とした『紙ひこうき』は、タンツテアターの構造を持ち、女子高生の生活や心理とその素材によって構成されながら 、リアリティを持って迫ってきた。「いじめ」を語るモノローグ、時間が止まり仲間が動かなくなると、一人動ける子が悪意をぶ つけ出す場面や、校舎の中と生活を描く映像などそれぞれが惹きつける。
ピナ・バウシュの創作方法はダンサーたちに多くの質問をして言葉や動き、ダンスやパフォーマンスで表現させて作品を作る。 そこにはダンサーたち個人の生活や心理が浮かび上がり、独特の世界を作りだす。ファビアンはその方法をバレエ・ノアで行った ピナの作品ではタイトルやトータルイメージと個々のモチーフが強い連関を持たないように見えるところも魅力だが、この作品は 「女子高生」という一つのテーマで作られているところが異なる。それゆえに一般の観客にもよくわかるが、この場合それはマイ ナスではない。揃った群舞の作り方も、ピナによく似たもので、倒れたりよじれたりする部分も多いが、それも魅力的に演じられ た。大人ほど先入観なく踊ったこと、自分たちのエピソードで構成されることで作品に入り込み、踊る個人個人にとって意味とリ アリティのある作品となったことが、この舞台に独特の熱を与えているように思った。
バレエ・ノアの母体となる高崎沼田バレエスタジオは昨年、海外で活動する谷よう子の振付で『蕾時代』を上演した(パルテノ ン多摩、二○○七年六月十一日)。この作品もほとんど幕を下ろして女子高生の足元の動きだけを見せるなど、実験性もある見 応えのある作品だった。それだけ新しい振付を受け入れる素地があったが、今回の作品には本当に惹き込まれた。世田谷パブリッ クシアターで八月の再演が決定した。ぜひ多くの人に見てほしい。
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